一言サマリー

工場内ネットワーク(OT/製造現場)に対象を絞り、SMKLの「みえる化」4レベル(a~d)でセキュリティ対策の成熟度を簡潔に自己評価・共有できる指標を定義。横軸は工場内のネットワーク領域(制御/制御情報/生産情報/Industrial DMZ)、**縦軸は対策の成熟度(ログ収集→監視→分析→対応)**で構成し、各レベルの到達要件を“少数項目”に限定して、現場主導のロードマップ策定・改善運用を支援する。


位置づけと策定背景

  • 製造業はランサムウェア等の標的化が継続し、操業停止・サプライチェーン影響が深刻化。従来規格(IEC 62443、NIST CSF、SP 800‑82 など)は有用だが専門性が高く中小現場には導入ハードルがあるため、現場でも使える評価指標として「SMKLセキュリティ」を策定。
  • 共通言語化(対話のしやすさ)と段階的改善(ROI考慮)を重視。学術的な厳密性よりも実装容易性に比重を置く方針。

評価範囲(対象の限定)

  • 対象は工場内の製造現場と倉庫におけるネットワークセキュリティ。ISA‑95階層を前提に、IPネットワークが主となる領域を評価。サプライチェーン全体は範囲外。
  • 管理対象の横軸は工場ネットワークの4領域:
    制御ネットワーク / 制御情報ネットワーク / 生産情報ネットワーク / Industrial DMZ

マトリクス構成(横軸×縦軸)

  • **縦軸(みえる化レベル)**はSMKLの4段階を、セキュリティ機能に合わせて再定義:
    a:ログ収集 → b:モニタリング(状態・資産識別の可視化) → c:分析(継続監視と異常検知) → d:対応(緩和・改善)
  • 横軸(管理対象レベル)は上記4ネットワーク領域。両軸の組み合わせでSMKLセキュリティ・マトリクスを形成。

レベル到達要件(簡潔化が特徴)

各レベルは**“少数の到達要件”**で判定できるよう設計。代表的要件と典型対策を以下に整理。

レベル主な到達要件(例)典型対策(例)
a:ログ収集SNMP/Syslog等でログを自動収集し、継続監視に利用可能/ポートミラーリングが可能マネージドスイッチ導入 等
b:モニタリング資産(HW/SW)を検出・識別し、稼働状態を可視化**NMS(ネットワーク管理システム)**導入 等
c:分析選択したサイバー要件の継続監視異常・侵害兆候を検出OT‑IDS導入 等
d:対応封じ込め・隔離等の保護措置を実施可能/通信・制御ネットワークの保護を継続運用SOC/CSIRTによる運用 等

※各レベルは**“全項目を満たさないと不可”という設計ではなく**、現場で自己評価しやすい最小要件に絞っている点が特徴。


工場での活用(現場向けユースケース)

  • 現状把握と目標設定:まず現在位置(対象領域×成熟度)をマッピングし、リソースとリスク許容度、事業継続性を踏まえ段階的な目標を設定。すべての領域で最高レベルを目指す必要はない。
  • ロードマップ策定:リスク/ギャップ分析→ポリシー整備→運用体制→自動化・高度化のフェーズ分けで継続推進。
  • 改善運用:定期評価、進捗可視化、関係者の意識合わせに活用。

インテグレータでの活用(提案・運用の型)

  • 現状評価~目標最適化のワークフローで、顧客の強弱を整理し共通認識を形成。
  • ロードマップ提案:顧客特性(拠点・接続先・規制要件・更新サイクル等)を踏まえ、通過セルの道筋を合意して段階的実装。
  • ソリューション・マッピング:自社/アライアンスの商材をSMKLセキュリティ上に配置し、ポートフォリオの強弱や補完領域を見える化。ワンストップ提供の構築にも展開。
  • 提案~導入~運用の各フェーズで投資優先度の説明/実装進捗の可視化/継続評価に活用。

評価の拡張(点数化試案・規格整合・今後)

  • 成熟度の点数化試案:定量評価の基本考え方、IEC 62443のFRsとの対応を示し、ベンチマーク可能性を検討。
  • 多層防御とゼロトラスト:今後の対応として、多層防御モデルゼロトラストの考え方を踏まえた検討を拡充。
  • 環境変化への適合:クラウドファーストやエッジAI等、製造DXの潮流に応じてSMKLセキュリティの適用領域と要件の更新を示唆。

実務での使い方(クイック手順)

  1. 範囲の特定:制御/制御情報/生産情報/Industrial DMZのどこを対象にするか決める。
  2. 現在値の判定:各対象でa~dの最小到達要件をチェックして現位置を塗り分け。
  3. 目標と優先順位:事業影響・ROI・人員体制を考慮し到達セルを合意。
  4. 施策とロードマップ:NMS/OT‑IDS/SOC等の代表施策を段階配置し、ポリシー~運用~自動化のフェーズ化。
  5. 定期レビューSMKLマトリクスで進捗可視化、ギャップ再評価、点数化試案を併用して横展開。

こんな時に効きます

  • 「まず何から?」問題:a(ログ)→b(監視)→c(分析)→d(対応)と段階を踏めるので、現場で着手しやすい。
  • 部門間の認識差:どの対象範囲×成熟度の話かが一目で伝わり、IT/OT/製造の共通言語になる。
  • 投資判断ROI考慮の優先順位付けで、無理なくロードマップ化できる。