「安全、グループ安全、制御システムセキュリティ、エネルギー管理、トータル危機管理」
 2011/9    IAF 幹事 村上正志氏

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5.エネルギー管理の本質
    ものづくりの企業が考えるに、3・11以来、重要課題となっているのがエネルギー危機である。しかし、このエネルギー管理を良く考えてみると、以下のことが言えるのではないか。
    原子力発電所が稼動しないことで、求められるのがエネルギー・ピークカットであり、電力需要の平準化である。これは緊急事態であるから対処することになるが、ものづくり企業のエネルギー管理とは、単にピークカットや節電だけであろうか?
    詳細エネルギーデータを測定していくと、生産する製品によってエネルギーコストが異なることも分かるし、同じ製品でも生産ライン別に必要とするエネルギーコストが異なることも分かってくる。また、生産装置によっても異なることが分かってくると、改善する課題も見えてくる。生産スケジュールの組み方も使用する生産ラインも適切に選択することで全体のエネルギー消費の改善も可能となる。つまり、エネルギーの仕事量、仕事効率を管理することができるようになるのである。<図6>

    つまり、製造業では、生産エネルギーの最適化として、以下の課題をこなしていくことがエネルギー管理の本質ではないだろうか。

  1. 個々の製品を生産するエネルギーコストを知って、これを低減する。
  2. 生産ライン別のエネルギー仕事効率を知り、これをカイゼンし、低減する。
  3. 個々の装置のエネルギー仕事効率を知り、これをカイゼンし、低減する。

6.トータル危機(リスク)管理の見える化
    安全、グループ安全、制御システムセキュリティ、エネルギー管理と我々が取り組まなければならない課題は、多いし、責任は大きい。それに、一つ一つのリスク低減の積み重ねでトータルリスクの低減が可能となる。
    しかし、制御/機械/装置ベンダの安全対策と現場の作業者の訓練だけで安全を確保するには、限界が来ている。企業として、これらの課題に投資することを前提に現場の声をよく聞くべきではないだろうか。
    それと、安全に関するリスクの見える化に取り組んでいくことも重要ではないだろうか。見える化によって本質の存在を的確に捉え、改善を繰り返し実施していくことがなければ、成果は出てこないと思う。

7.まとめ
    現場の安全確保は人間の注意力に依存した精神論では片付かない。
    「予算は、これだけしか出せないから、後は教育と訓練でカバーしてね。」で、果たして企業責任を果たしていると言えるのだろうか。
    つまり、安全とは、作業者責任から企業責任へ、教育訓練主体から本質安全確保へ、安全な使い方の指示徹底から安全制御による機械へと、もっと本質に向けて取り組んでいくことだと思う。
                                                    以 上

――――― 著者紹介 ――――――――
村上正志 (むらかみ まさし)
IAF 運営委員会 幹事
日本OPC協議会 企画部会長
PLCopen Japan OPC ワーキング主査
株式会社デジタル コーポレートコーディネーション VEC事務局長
http://www.vec-member.com/
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